◆南拳と洪家拳

● 南拳

南拳とは特定の拳法を指すものではなく、中国南方の拳術を総称してそう呼びます。
また、表演の試合に出てくる南拳は、洪家拳などの拳法を中心に派手で見栄えがするようにアレンジしたものです。
劉湘穗老師は祖父に家伝の洪家拳や先天功などの武術を学ばれました。
劉老師の家は代々武術を伝える家系で、家族の中だけで保守的に教えられたものだそうです。
家伝の武術をひと通り身に付けた後は、他の武術家と交流したり、実力ある師を訪ねたりして蔡李仏拳、侠家拳、扇子功、陳式太極拳、螳螂拳などを学ばれました。

● 洪家拳

洪家拳は洪拳ともいい、ひろく普及している南拳です。
普及しているだけに、教える人によって異なる点が数多くありますが、拳勢剛勁というように、非常に力強いのが特徴です。
しかし、ただ力強いだけでなく、“以横克直”“以小撃大”といったように、角度や方向の工夫によって相手の攻撃を受け流し、死角を攻めるといった巧妙さを備えています。
套路には、虎鶴双形拳、鉄線拳、単工伏虎拳、五形拳などがあります。
本来は一、二套しかなかったのものが、後に発展して増加したのです。
有名な虎鶴双形拳も、香港で本を出版した著名拳師・林世栄が創出したものです。
これは前半が洪拳、後半が蔡李仏拳の技術より成り立っていて、動作がうまく組み合わされています。
この套路(型)は、今では基本套路とされ、最初に学ぶことになっています。